目次
概要(目的・背景)
データ分析の現場では、過去のデータから未来の動向を予測することが求められる場面が多々あります。特に売上やアクセス数などの時系列データにおいて、将来の傾向を把握することは、ビジネス戦略の策定やリソース配分の最適化に直結します。しかし、これらの予測を手作業で行うのは時間と労力がかかり、専門的な知識も必要とされます。そこで、Microsoftのデータ可視化ツールであるPower BIを活用することで、手軽に時系列予測チャートを作成し、意思決定をサポートすることが可能となります。
読み手(誰に向けた記事か?)
この記事は、Power BIを使ってデータ分析を行いたいと考えている中級者の方々を対象としています。特に、日々の業務でデータを扱っているものの、予測分析にはまだ踏み込めていないビジネスアナリストやデータアナリストの方々に向けて、具体的な手順や活用方法をわかりやすく解説します。また、データの可視化や分析に興味を持つエンジニアの方々にも、有益な情報を提供できればと考えています。
ブログの目標設定(具体的な目標)
本記事の目標は、以下の通りです。
・時系列予測チャートのメリットと活用シーンを把握する:予測チャートを活用することで得られる利点や、具体的なビジネスシナリオを紹介します。
・Power BIで時系列予測チャートを作成する手順を理解する:具体的な操作手順を示し、読者が自身のデータで予測チャートを作成できるようにします。
これらの目標を達成することで、読者の皆さんがPower BIを活用して効果的な時系列予測を行い、データに基づいた意思決定を支援できるようになることを目指します。
方法(アプローチ・使用技術)
時系列予測チャート
時系列予測チャートとは、過去のデータをもとに未来の値を予測し、その結果を視覚的に表現したグラフのことを指します。このチャートは、経済や金融、気象、販売実績、人口動態など、時間とともに変動するデータを分析する際に広く活用されます。

時系列予測チャートを作成するうえで、検討すべき要素は「予測したい期間」「信頼区間」「季節性」の3つあります。

信頼区間とは、予測値が一定の確率で収まる範囲を示す指標です。
3オメガルールでは、標準偏差を用い、平均値±3標準偏差の範囲にデータの99.7%が含まれ、高い精度で予測の信頼性を示します。

時系列予測チャートは、単なる実績の延長ではなく、外部環境の変化を考慮することで実用的な洞察を得られます。未来のシナリオを想定し、より精度の高い予測と意思決定に活用することができます。

時系列予測チャート 作成手順
本記事で作成する時系列予測チャートは、「Power BIでインサイトを抽出!データ分析の第一歩」シリーズのデータを活用します。
---
データの取り込みを完了したPower BIファイルは下記の添付ファイルです。サンプルデータを取り込んだテーブル・ビジュアルを完了していますので、添付ファイルを操作して時系列予測チャートの動作イメージをご確認ください。
1.感度分析用のパラメーターを設定する。
①.「モデリング」タブから「新しいパラメーター」ボタンを押下して、「数値範囲」を選択する。

②.以下の設定をする。(増分は0.1単位で設定する。)

③.スライサーのサイズを整えて配置する。

④.Salesテーブルへ「新しいメジャー」を作成する。

⑤.以下のコードを設定する。
all_sales =
VAR temp = Sum(Sales[Price])
VAR v_rate = 'rateData'[rateData の値]
RETURN temp * v_rate

2.時系列予測チャートを設定する。
①.ビジュアルから「折れ線グラフ」を選択する。

②.X軸とY軸を設定する。
X軸:「Calendar」テーブルの「Date」列
Y軸:「Sales」テーブルの「all_sales」メジャー

③.ビジュアルの詳細設定より「予測」をONにする。

④.オプションを設定する。
単位:ポイント
予測の長さ:12(未来の12か月分)
最後を無視する:0(開始位置を実績の末尾に追加する。「1」の場合、末尾の2023年3月から1か月前から予測線を生成する)
季節性:6(6か月周期で設定※本来は12か月にしたが、実績データが12か月しかないため、6か月の周期で設定しています。)
信頼区間:75%(99%や95%にすると、実績データが少なく、予測幅が広くなりすぎるため、75%を設定)
設定後、適用ボタンを押下する。

⑤.画面左上のインジケータを「「Sales」テーブルの「all_sales」メジャー」を設定する。

以上で、時系列予測チャートの設定は完了です。
来年の売り上げが今年実績の80%であった場合、売り上げの予測推移を表すことができます。

また、特定の商品の売り上げだけに絞って予測推移も確認できるため、外部環境に合わせて推移をみることでより詳細な分析が可能です。

参考資料 Power View for Office 365 の新しい予測機能の導入 |Microsoft Power BI ブログ |マイクロソフトパワーBI
まとめ(結論と今後の展望)
本記事では、Power BIの時系列予測チャートの活用について、その作成方法やメリット、適用シーンを詳しく解説しました。時系列データを分析し、将来の動向を予測することは、企業の意思決定や業務効率化において非常に有益であり、特に売上予測や在庫管理、需要予測といった分野で大きな効果を発揮します。Power BIを活用すれば、専門的なデータサイエンスの知識がなくても、視覚的にわかりやすい形で予測を行うことができ、迅速なビジネス判断を支援できることが明らかになりました。読者の皆さまが本記事を通じてPower BIでの時系列予測チャートの作成方法を習得し、実際の業務に活用していただけましたら幸いです。