目次
概要(目的・背景)
ビジネスの現場では、データ分析の重要性が増しています。しかし、Power BI の多様なライセンス形態により、どのライセンスが自社のニーズに最適か判断が難しいという声をよく耳にします。本記事では、各ライセンスの特徴や違いを明確にし、最適な選択をサポートすることを目的としています。
読み手(誰に向けた記事か?)
この記事は、Power BI の導入を検討している企業の IT 担当者、または既に利用しているがライセンスの違いを詳しく知りたいと考えている方向けに書かれています。
・企業の IT 部門で Power BI の導入を検討している担当者
・Power BI を利用しているが、他のライセンスの機能や違いを知りたいユーザー
ブログの目標設定(具体的な目標)
この記事の目標は、以下の通りです。
・各 Power BI ライセンスの特徴と違いを明確に説明する
・読者が自社のニーズに最適なライセンスを選択できるようサポートする
・ライセンス選択の際の注意点やポイントを提供する
これらの目標を達成することで、読者が自信を持って Power BI のライセンスを選択できるようになることを目指しています。
方法(アプローチ・使用技術)
1.ライセンスの種類
各ライセンスの詳細を以下にまとめました。ユーザーアカウントに紐づくライセンスとテナントに紐づくライセンス(プラン)の2種類あるため、注意が必要です。
◆ユーザーライセンス
ライセンス名 | 説明 |
---|---|
Power BI Free | 個人ユース向けの無償プランです。ローカルな環境でレポートを作成したり、分析をすることが可能ですが、共有機能に制限があります。個人利用が中心で、スタンドアローンアプローチの方向に向いています。※他者との共有機能は制限(できない)されています。 |
Power BI Pro | 月額制の有償ライセンスです。Proはコラボレーションを利用した共有機能に重点を置いています。コラボレーションやリアルタイム解析に優れ、重要な分析資料を変更、利用できるようにします。※Office 365 E5 プランには含まれていますが、E3 以下のプランでは別途購入が必要です。 |
Power BI Premium Per User (PPU) | 高度な機能を利用できる上位ライセンスで、Pro の機能に加えて、ページ分割されたレポートや高度な AI 機能が使用可能です。 |
◆テナントの容量プラン
ライセンス名 | 説明 |
---|---|
Power BI Premium Per Capacity | 組織専用の拡張リソースを提供する容量ベースのプランで、Free ユーザーにもコンテンツを提供できます。ただし、2024 年 7 月以降、新規購入はできず、Microsoft Fabric Capacity への移行が進められています。 |
Power BI Embedded | アプリケーション開発者向けの容量プランで、利用時間ごとに従量課金されます。顧客向けと組織向けの埋め込みオプションがあり、用途に応じて選択できます。※Power BI Embeddedは、私の記事では取り扱わないため、説明までとします。 |
2.全体構成(概要)
次はPower BI のレポートを自社のメンバーへ共有するときの全体構成(概要)です。下記例は、社内の田中さんがPower BI Desktopでダッシュボードを作成した後、Power BI Serviseのワークスペースに発行しています。発行されたレポートは、社内の加藤さんが参照を行います。ポイントは、「ワークスペースの種類」とPower BI レポート作成者、Power BI レポート閲覧者の「ライセンスの種類」となります。※赤枠箇所

3.ワークスペースの種類
ワークスペースには3種類あります。
ワークスペース名 | 説明 |
---|---|
マイワークスペース | 個人専用のワークスペースで、基本的にユーザー一人がデータの管理・分析を行うために利用されます。 ※1アカウントにつき、マイワークスペースを1つ保有します。 |
ワークスペース (Premium容量なし) | 複数のユーザーが共同で作業するためのワークスペースで、チームやプロジェクト単位で利用されます。 |
ワークスペース (Premium容量あり) | 共有ワークスペースの上位版で、追加機能や高性能なリソースが提供されるワークスペース。Premium容量ありのワークスペースは、前述した、テナントの容量プランにて「Power BI Premium Per Capacity(Microsoft Fabric Capacity)」を保有している場合のみ、利用できます。 |
各ワークスペースは、Power BI レポート作成者が保有しているライセンスによって、レポート・データセットの発行可否が異なります。また、参照者も同様に、保有しているライセンスによって、参照可能なレポートが異なりますので、パターンごとの説明を行います。
4.レポート・データセット発行のユースケース
Power BI レポート作成者が保有しているライセンスによって、レポート・データセットの発行可否を以下にまとめます。

Power BI レポート作成者(田中さん)のライセンスと各ワークスペースの種類に応じた発行可否を下記一覧
(田中さんの) ライセンスの種類 | マイワークスペース (田中さん※本人) | マイワークスペース (加藤さん※他者) | ワークスペース (Premium容量なし) | ワークスペース (Premium容量あり) |
---|---|---|---|---|
Power BI Free | ○ | ×(他者のマイワークスペースには保存不可※1) | × | × |
Power BI Pro | ○ | ×(他者のマイワークスペースには保存不可※1) | ○ | ○ |
Power BI Premium Per User (PPU) | ○ | ×(他者のマイワークスペースには保存不可※1) | ○ | ○ |
(※1).マイワークスペースは、データセット、レポート、ダッシュボードを個人で作成・管理するための専用領域であり、他者からの直接アクセスや操作を許可していません。
5.レポート参照のユースケース
Power BI レポート参照者が保有しているライセンスによって、レポート・データセットの発行可否を以下にまとめます

Power BI レポート参照者のライセンスと各ワークスペースの種類に応じた発行可否を下記一覧

(※1).他者のマイワークスペースへレポートを発行することはできないため、対象外
(※2).Power BI Free ライセンス所有者は、発行できないワークスペースであるため、対象外
(※3). PPU ワークスペースでホストされているコンテンツは、PPU ライセンスを持つユーザーのみが使用可能
5.ライセンス購入パターン
シナリオ別のライセンス購入方法(最適)をまとめます。
シナリオ | Power BI レポート作成者 | Power BI レポート参照者 | ライセンス購入方法 |
---|---|---|---|
① | 社内の不特定多数 (≒全社員) | 社内の不特定多数 (≒全社員) | 対象すべてのユーザーにPower BI Pro or Power BI Premium Per User (PPU)のライセンスを購入・設定する。 |
② | 社内の一部のみ | 社内の一部のみ | 同上 |
③ | 社内の一部のみ | 社内の不特定多数 (≒全社員) | Power BI レポート作成者・・・Power BI Pro or Power BI Premium Per User (PPU)のライセンスを購入・設定する。 Power BI レポート参照者・・・Power BI Freeのライセンスを設定する。 テナント・・・Power BI Premium Per Capacityを設定する。 |
シナリオ①・②の説明
社内のすべての従業員にPower BI Pro or Power BI Premium Per User (PPU)を購入することで、各々が作成したレポートを参照することができます。
シナリオ③の説明
Power BI レポート作成者への「Power BI Pro or Power BI Premium Per User (PPU)のライセンス」とテナントへの「Power BI Premium Per Capacity」にて、シナリオ①の購入方法よりも抑えられる可能性があります。
シナリオ③を購入ときのユースケース
例)社内3,000名、内10名のみPower BIのレポートを作成する場合
シナリオ①の購入方法)
全ユーザー分のPower BI Pro:1,499円×3,000名 = 4,497,000円
シナリオ③の購入方法)
10名分のPower BI Pro:1,499円 ×10名 = 14,990円
Power BI Premium Per Capacity(Microsoft Fabric SKU F64):1,545,803円(Microsoft Fabric - 価格 | Microsoft Azure)
計 1,560,793円
このように、ライセンスの特性を理解することで、費用を抑えることができるため、購入時には考慮が必要です。

ライセンスの選択は、組織の規模や利用目的、予算などに大きく依存します。そのため、定期的に組織のニーズを見直し、最適なライセンスを再評価することが重要です。また、Microsoft のライセンス体系は変更されることがあるため、最新情報を常に確認することをおすすめします。
まとめ(結論と今後の展望)
Power BI の多様なライセンス形態を理解し、組織のニーズに最適なものを選択することは、効果的なデータ分析と意思決定に直結します。今後も新しい機能やライセンス形態が登場する可能性があるため、最新情報を継続的にチェックし、組織にあったライセンスのご購入を検討いただけますと幸いです。
https://jpbap-sqlbi.github.io/blog/powerbi/pbi_license
https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-bi/fundamentals/service-features-license-type
https://learn.microsoft.com/ja-jp/power-bi/consumer/end-user-features